皆様、お疲れ様です!今回、読んだ本は饗庭 伸氏の「都市をたたむ」という本です。かなり以前に仕事用資料の作成の為に購入をしたのですが、今回は都市社会学のレポート作成の為に読みました。相変わらず、読書に割ける時間があまりなくてという状態でしたが、レポートの為に何とか頑張りました。
著者概要
(Wikipediaより引用しております)
饗庭 伸(あいば しん、1971年3月31日 – )は、日本の工学者・都市計画家。学位は、博士(工学)(早稲田大学・論文博士・2003年)。東京都立大学教授。兵庫県西宮市出身。
1971年 – 兵庫県西宮市生まれ。
1989年 – 早稲田大学本庄高等学院卒業
1993年 – 早稲田大学理工学部建築学科卒業
2000年 – 東京都立大学工学研究科建築学専攻
2005年に東京都立大学は首都大学東京に改組
2007年10月 – 首都大学東京准教授
2017年4月 – 首都大学東京教授
2020年4月 – 再度の改称により東京都立大学教授
活動
山形県鶴岡市の一連のまちづくり(1996年-)、東京都の震災復興模擬訓練(2003年-2007年)、東京都国立市やぼろじ(2010年-)、岩手県大船渡市三陸町綾里地区の復興(2012年-)などに関わる。 まちづくり情報センターかながわ(アリスセンター)理事・理事長(1999年-2004年)、市民と議員の条例づくり交流会議 共同代表(2008年-2017年)。国土交通省社会資本整備審議会都市計画制度小委員会専門委員(2017年-2020年)
(Wikipediaより引用しております)
書籍概要
出版社のコメントより
気鋭の都市計画研究者が問う
新時代の都市論
「『都市をたたむ』の英訳は『shut down』ではなく、『fold up』である。つまり、この言葉にはいずれ『開く』かもしれないというニュアンスを込めている。 日本全体で見ると人口は減少するが、空間的には一律に減少せず、特定の住み心地のいい都市に人口が集中する可能性もあるし、都市の内部でも人口の過疎と集中が発生する可能性がある。さまざまな力やさまざまな意志にあわせてたたんだり開いたりする、いわば、都市と、都市ではないものの波打ち際のような空間がこれから出てくるのではないだろうか。(本文より)」
読んでみて
我々日本国は、2008年に人口がピークを迎え少子高齢化に転じるまでは景気も人口もうなぎ上りでそれに伴いスプロールしながら都市は発展してきたと思います。
スプロールとは(Wikipediaより)
スプロール現象(urban sprawl)という語句は、1955年のタイムズ紙の記事上において、ロンドン郊外の現状を否定的に表現する用語として初出した。スプロールの定義は曖昧であり、この分野の研究者も学術用語としての「スプロール」が正確さを欠いていることを認めている。マイケル・バティらはスプロールを「無秩序な成長。成り行きを気にせずにコミュニティを拡大していくこと。しばしば持続不可能とみなされる無計画かつ漸増的な都市成長」と定義する[7]。また、バスデブ・バッタ(Basudeb Bhatta)らはスプロールの明確な定義には議論があるものの、「複数のプロセスにより推進され、非効率的な資源利用につながる、無計画かつ不均等な成長パターンによって特徴づけられることには一定の合意形成がある」としている。
単一用途の開発
商業地域、住宅地域、施設地域、工業地域がそれぞれ分離されている状態を指す。その結果、広大な土地区画が単一用途で利用され、それぞれが空地、インフラ、その他の障害物により分断されている。その結果、人々の居住、労働、買い物、憩いの場となる場所は互いに離れており、通常、徒歩、交通機関の利用、自転車での移動が不可能なほどであるため、これらの活動には通常、自動車が必要となる。この主題についての研究では、異なる土地利用がどの程度混在しているかの程度が、スプロールの指標としてしばしば用いられる[8]。この基準のもとでは、中国の都市化は「高密度スプロール」と分類することが出来る。この一見自己矛盾的な言葉は、ニューアーバニズムの理論家であるピーター・カルソープの造語である。カルソープは、中国のスーパーブロック(巨大な住宅街)は、高層建築物にもかかわらず、大部分が単一用途であり、巨大な幹線道路に囲まれているため、都市のさまざまな機能が切り離され、歩行者には不親切な環境になっていると説明している
「都市をたたむ」ですよ?
このタイトルを見たとき、皆さんはどう感じましたか?
私は正直、「え?たたむ?どういうこと??」って、ものすごく引っかかりました。だって、「都市」って、発展させて、拡大させて、豊かにしていくものだって、ずっと思い込んでいたから。それを「たたむ」なんて、一体どういうことなんだろう?って、強い衝撃と疑問が同時に押し寄せてきたんです。
著者の饗庭 伸(あいば しん)氏は、日本の都市計画研究の第一人者であり、人口減少や地域再生といった、まさに現代日本が直面する超ヘビーなテーマと向き合ってきた方です。その饗庭氏が放つこのタイトル…これはもう、ただごとじゃないぞ、と。
というわけで、今回はこの『都市をたたむ』という、ある意味「問題作」とも言える一冊に、どっぷり浸かって深堀りしていきます!
「都市をたたむ」って、一体どういうことなのか?
まず、この本の最もキャッチーで、最も議論を呼ぶであろう「都市をたたむ」という言葉の真意を探ってみましょう。
これは決して、「都市を破壊する」とか「まちから逃げ出す」といった、ネガティブで無責任な響きのものではありません。
本書が言う「都市をたたむ」とは、簡単に言えば、「人口減少という避けられない現実を受け入れ、無計画に縮んでいくのではなく、意図的に、戦略的に、まちの構造を『縮小・再編成』していくこと」だと私は理解しました。
想像してみてください。人口が減り続けるのに、道路や上下水道、公共施設といったインフラは老朽化していく。使われなくなった空き家や空き地が増え、維持管理が行き届かなくなる。人がまばらになり、コミュニティの活力が失われていく…。
これは、多くの地方都市や郊外で、既に静かに進行している現実です。従来の「拡大」を前提とした都市構造のまま人口だけが減っていくと、まち全体が「スポンジ化」したように希薄になり、非効率で、かつてあった都市としての機能や魅力を失ってしまう。
『都市をたたむ』は、この無秩序な衰退を食い止め、「縮小してもなお、そこに住む人々が豊かに暮らせる、持続可能な都市のあり方」を目指すための、極めて現実的で、かつ大胆な提案なのです。
まるで、使い終わったものをコンパクトに折りたたんで収納するように、都市の機能や居住エリアをキュッと集約し、余った部分を別の用途(例えば農地に戻す、自然に戻す、コミュニティスペースにする等)に転換していくイメージでしょうか。
なぜ、「たたむ」ことが、今必要なのか?
前述の通り、日本の人口減少は止まりません。そして、それは一部の過疎地域だけの問題ではなく、都市部郊外や、これまで「勝ち組」とされてきた地方の中核都市ですら、例外ではなくなりつつあります。
従来の都市計画は、人口増加と経済成長を前提に「どこに、何を、どれだけ作るか」を考えてきました。しかし、人口が減る時代に同じやり方を続けても、非効率なインフラ投資や、誰も使わない公共空間を生み出すだけです。
饗庭氏は、この本で、「私たちは、都市が縮小する現実から目を背けてはいけない。そして、その縮小を単なる衰退と捉えるのではなく、新しい都市の姿をデザインし直すチャンスとして捉えるべきだ」と強く訴えかけているように感じます。
「たたむ」ことは、諦めではなく、むしろ未来への投資なのです。無駄な維持管理コストを削減し、集約したエリアに資源を集中することで、限られたパイでも質の高い生活やサービスを維持・向上させることができるかもしれない。
『都市をたたむ』が掘り下げる具体的な論点
本書が深堀りしているのは、単なるコンセプト論だけではありません。具体的な都市の構成要素ごとに、「たたむ」ことの意味や方法論が論じられています。
- 居住エリアの再編成: どこに住んでもらうのが効率的で、どこはそうではないのか? ゾーニングや誘導策はどうあるべきか? 空き家問題の解決だけでなく、その先の土地利用まで踏み込みます。
- インフラの「取捨選択」: 全ての道路や上下水道を維持できるわけではない。では、どれを優先し、どれは諦めるのか? その判断基準とは? これは、住民生活に直結する、非常に痛みを伴う議論です。
- 公共空間の再定義: 使われなくなった学校や公民館、商店街の跡地などをどうするのか? 負の遺産にしないためのアイデア、あるいは、縮小時代ならではの新しい公共空間のあり方を探ります。
- コミュニティと合意形成: 「たたむ」プロセスは、住民にとって大きな変化であり、不安を伴います。この難しいプロセスを、どのように住民と話し合い、合意を形成しながら進めていくのか? まさに「まちづくり」の本質が問われます。
- 法制度や経済の壁: 都市計画法や個人の財産権など、現行のシステムが「拡大」を前提としているため、「縮小」には様々な壁があります。それをどう乗り越えるのか? 経済的なインセンティブはどう設計するのか?といった、制度的な課題にも切り込みます。
読んでいると、「ああ、これは本当に大変な時代に突入したんだな…」と、改めて現実の重さを突きつけられます。でも同時に、「この現実から目を背けず、真正面から向き合えば、まだ打つ手はあるのかもしれない」という希望の光も見えてくるのです。
私たちが『都市をたたむ』から学ぶべきこと
この本は、単に専門家だけが読むべき本ではありません。日本のあらゆる地域に住む私たち一人ひとりが、「自分のまちの未来」について考えるための、極めて重要な「問題提起の書」です。
あなたの住むまちは、これからどうなっていくのか?
あなたは、どんなまちで、どんな風に暮らしたいのか?
そして、そのために、今何を知り、何を考え、どんな行動を起こすべきなのか?
『都市をたたむ』は、これらの問いを私たちに突きつけます。
「たたむ」という言葉には、終わりのような響きがあるかもしれません。しかし、本書が示すのは、むしろ「より良い未来のために、今までの形を一度解体し、再構築する勇気」なのではないでしょうか。
それは、個人レベルでの働き方やライフスタイルの変化にも繋がる話かもしれません。会社や組織も「たたむ」ことはないにしても、縮小や再編を迫られる時代です。その変化にどう向き合うか、という思考のヒントも得られるはずです。
まとめ:覚悟して読んでほしい、未来を考えるための必読書
饗庭 伸 氏の『都市をたたむ』は、人口減少社会のフタを開け、その中身を容赦なく見せつける本です。衝撃的なタイトルに偽りなく、内容はヘビーで、安易な解決策はありません。
しかし、この現実を知ることこそが、未来を創るための第一歩です。
この本を読んだ後、きっとあなたのまちの見え方は変わるはずです。空き家やシャッター通りが、単なる寂しい風景ではなく、未来の土地利用の可能性として見えてくるかもしれません。不便になったバス路線が、地域で支え合う新しい交通システムの必要性として感じられるかもしれません。
「たたむ」という逆転の発想の中にこそ、持続可能な日本の都市の未来を考える大きなヒントが隠されています。
怖いけど、知りたい。難しいけど、考えたい。
そんな知的好奇心と、未来への責任感を持つすべての人に、心からお勧めしたい一冊です。
ぜひ、この本を手に取って、「都市をたたむ」という衝撃的な問いに、あなた自身の答えを見つけてみてください。
それでは、また次の深堀りでお会いしましょう!
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