【猫】慢性腎不全と関連するモルビリウイルス

 自分の愛猫の腎不全を何とかしたくて、日々色々な論文などを読んでいる人も多いのではないでしょうか?

 私も時間をみては、色々と検索して調べています。しかし、人間もそうなのですが腎臓や肝臓が一度悪くなると本当に劇的に回復とかないのは重々承知なのですが、やはりわらをもすがる気持ちで調べています。今回あげた二つの論文は、両方とも京都大学ウイルス・再生医科学研究所附属感染症モデル研究センターが関わっています。

ネコモルビリウイルス(feline morbillivirus : FeMV)は 2012 年に香港で初めて発見され,ネコの 慢性腎不全(尿細管間質性腎炎)との関連が示唆された.FeMV はモルビリウイルス属に分類されて いるが,他のモルビリウイルスのグループから遺伝的に離れており,感染標的組織や病原性にも違い がある.FeMV は世界各地で検出されており,遺伝的多様性に富んでいる.その一方で,遺伝的に極 めて近縁な株が遠く離れた場所でみつかっており,伝播経路については不明である.FeMV 発見後の 研究でも,疫学的に FeMV と腎疾患や下部尿路疾患との関係が示唆されているが,感染実験で疾病 が再現されておらず,FeMV の病原性については不明な点も多い.FeMV の診断には,核酸検査と抗 体検査が用いられているが,検査法は統一されておらず,感度や特異性についての検討もなされてい ない.FeMV の疫学調査や病態解明のためには,簡便で特異性が高い核酸検査法や抗体検査法の開発 が望まれる.FeMV は慢性疾患を引き起こすモルビリウイルスとしてウイルス学的見地からも興味深いが,慢性腎疾患というネコにとってもっとも重要な疾病の一つに関わるため,獣医学的にも重要で あり,今後の研究が期待される.

ネコモルビリウイルスの発見と現状についてより

 猫ちゃんの慢性腎不全に関しては、原因について明確になっていません。危険因子として、高齢であることや急性腎不全になったことがあるかどうか、その他の泌尿器疾患(腎盂腎炎、腎結石・尿路結石など)にかかっているかなどや口内炎と腎疾患との関係性も疑われています。またはウイルスや細菌感染での腎不全が疑われています。(今回はその話ですね)。ウイルスや細菌感染での免疫反応で,特殊な蛋白が糸球体に結合して炎症が起こり,体の蛋白が尿の中に失われてしまいます.蛋白が高度に失われると,腹の中に水がたまったり(腹水),皮下に水が溜まったりします(浮腫).また,尿中に蛋白が失われる病気には,腎臓のアミロイドーシスも含まれます.これもアミロイドという異常な蛋白の腎組織への沈着が原因とのこと・・・.

猫モルビリウイルスと尿細管間質性腎炎との関連

FmoPV 陽性の2頭の野外猫で剖検が行われた。様々な器官を組織学的に調 べたところ,腎臓において,間質への炎症細胞浸潤と 尿細管変性もしくは尿細管壊死が認められた。変性し た尿細管上皮細胞においては,尿細管上皮細胞で特異 的に発現するコーキシンというタンパク質の発現の低 下が見られた。コーキシンの発現低下は尿細管間質性 腎炎に特徴的に見られるものである。以上の結果から, これらの猫は尿細管間質性腎炎と診断された。 免疫組織化学染色においては,尿細管上皮細胞に FmoPV 抗原が認められ,FmoPV が尿細管上皮細胞で増殖していることが確認された。リンパ節においても, マクロファージに FmoPV 抗原が認められ,このウイルスがマクロファージにも感染していることが分かった。 研究グループはさらに,27頭の野外猫から腎組織, 尿サンプル,血漿サンプルを集め,FmoPV 感染と腎疾 患の関連を調べた。その結果,27頭の野外猫のうち 12 頭が FmoPV に感染しており,うち 7頭(58%)が尿 細管間質性腎炎と診断された。一方,FmoPV に感染し ていない 15頭の猫では,2頭(13%)が尿細管間質性 腎炎と診断された。これらの結果から,FmoPV と尿細 管間質性腎炎には統計学的に有意な関連があると結論 づけられた。

猫の新興ウイルス感染症:慢性腎不全と関連するモルビリウイルス

FmoPV 感染と腎不全の関係はまだはっきりとしてい ないが,FmoPV の中和抗体が腎不全の猫で有意に高 率に見られることから,FmoPV が腎不全になんらか の形で関与していると思われる。その一方で,腎臓で の FmoPV の抗原陽性部位と病変部が異なることから, FmoPV が直接的に腎不全と関与しているわけではな いという可能性も指摘されている。しかし,FmoPV が IFN 関連遺伝子の発現を上昇させることから,FmoPV がサイトカインを介して腎臓で炎症を誘発して,その 結果,腎不全を起こしている可能性も考えられる。猫の腎不全と関連して,最近興味深い研究結果が公 表された。ヒトでは血液中のタンパク質 AIM(apoptosis inhibitor of macrophage;CD₅L とも呼ばれる)が急性腎 不全を治癒させる機能をもっている。ところが,猫の AIM は急性腎不全時に機能せず,そのために猫では正 常な治癒・回復が障害されていることがわかったので ある。さらに,マウスのモデルを用いて,猫型 AIM に 起因する急性腎不全の治癒障害は,AIM タンパク質の 投与によって治療できた。猫は AIM 遺伝子の変異によ り腎不全となりやすいのであるが,その引き金となっ ているのが腎臓に持続感染している FmoPV の可能性も 考えられる。

猫の新興ウイルス感染症:慢性腎不全と関連するモルビリウイルス

 ここで前回記事にしたAIMの話につながる訳です。まあ、基本的に腎不全に対するここらへんのアプローチが結構最新なのかもしれません。とにもかくにも、何かしらの良い方向へのアプローチが確立されることを願っています。ちょっと気になるのはこのウイルスはマクロファージにも感染するということでしょうか。
またじっくり論文を探して読んでみたいと思います。ニャゴニャゴ!!

あわせて読みたい腎臓①
腎臓②
腎機能③(クレアチン)
腎機能④ BUN(血中尿素窒素)
APOPTOSIS INHIBITOR OF MACROPHAGE
腎機能低下対処 球形吸着炭クレメジン
【猫】ネコと腎臓病とAIM研究

 

 

コメント

タイトルとURLをコピーしました