【読書】人口減少時代の都市計画 (東大まちづくり大学院シリーズ)【大西隆】

色々

皆様、お疲れ様です。ブログ更新が全然進んでいないのですが、ボチボチとやっていけたらなと思っています。今回、読んだ本は「人口減少時代の都市計画 (東大まちづくり大学院シリーズ)」です。仕事の為だったと記憶していますが、かなり昔に読んだと思います。今回は慶応義塾大学での都市社会学の科目でのヒントになるかしらと読んだ次第です。

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著者概要

学芸出版社より引用しております

編著者

大西 隆(おおにし たかし)

はじめに、1章、8章1節、9章、おわりに

1948年生まれ。東京大学大学院教授。
東京大学大学院博士課程修了、長岡技術科学大学助教授、AIT助教授、MIT客員研究員、東京大学助教授、同教授、同先端科学技術研究センター教授を経て、2008年4月から現職。
専門分野は、国土計画、都市計画。主な著書に『欧米のまちづくり都市計画制度』(共編著、ぎょうせい、2004年)、『逆都市化時代』(単著、学芸出版社、2004年)、『低炭素都市』(共編著、学芸出版社、2010年)、『広域計画と地域の持続可能性』(編著、学芸出版社、2010年)。国土審議会会長代理・政策部会長、産業構造審議会委員・地方経済産業分科会長、東大まちづくり大学院コース長。

執筆者

明石達生(あかし たつお)

2章

1961年生まれ。国土交通省国土技術政策総合研究所都市計画研究室長。博士(工学)。
1984年東京大学都市工学科卒業。建設省(現国土交通省)入省。主に都市計画行政を担当して現職。2007年から3年間東京大学教授(まちづくり大学院)を兼務。
専門分野は、都市計画の行政制度。主な著書に『人口減少時代における土地利用計画―都市周辺部の持続可能性を探る』(共著、学芸出版社、2010年)、『中心市街地活性化三法改正とまちづくり』(共著、学芸出版社、2006年)、『都市計画の地方分権―まちづくりへの実践』(共著、学芸出版社、1999年)。

岸井隆幸(きしい たかゆき)

3章

1953年生まれ。日本大学理工学部土木工学科教授。
東京大学大学院修士課程(都市工学)修了。1977年建設省(当時)に入省、本省・地建・公団・県・市・事業団などで都市計画業務に従事の後、1992年博士(工学)を取得し退職。同年日本大学理工学部専任講師、同助教授を経て、1998年4月より現職。
2010年12月現在、日本都市計画学会会長、環境省中央環境審議会臨時委員、東京都景観審議会会長、川崎市都市計画審議会会長、熊本県デザイン会議座長などを務める。
専門分野は都市計画、なかでも都市開発事業、都市交通計画。主な著書に『明日の都市づくり―その実践的ビジョン』(共著、慶應義塾大学出版会、2002年)、『新・都市計画マニュアル』(共著、日本都市計画学会編、2003年)、『首都圏の広域行政』(共著、東京都編、2003年)など。

遠藤 薫(えんどう かおる)

4章、8章7節

1957年生まれ。東京大学先端科学技術研究センター教授(都市再生プロジェクト担当)。
東京大学大学院修士課程修了、住宅・都市整備公団(現UR都市機構)を経て、2007年6月から現職。
専門分野は、都市再生・都市再開発。主な著書に『東京モデル―密集市街地のリ・デザイン』(共著、清文社、2009年)、『東京のリ・デザイン―広域的な環境価値最大化を目指して』(共著、清文社、2010年)。

長島俊夫(ながしま としお)

5章

1948年生まれ。日本郵政株式会社代表執行役副社長(元三菱地所株式会社代表取締役専務執行役員)。
慶應義塾大学商学部卒業。1971年三菱地所株式会社入社。横浜事業所副所長、都市開発事業部長、都市計画事業室長、取締役丸の内開発企画部長、代表取締役専務執行役員を経て、2010年12月同社を退職。2011年1月より現職。

小泉秀樹(こいずみ ひでき)

6章、8章5~6節

1964年東京都生まれ。東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻准教授。博士(工学)。
東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻博士課程修了後、1997年から東京大学大学院講師(都市工学)、 2007年4月より現職。研究成果を踏まえつつ多くの市民団体、自治体とまちづくり・都市計画の実践に取り組んでいる。また、都市計画提案制度の創設に社会資本整備審議会委員として関わる。著書に『スマート・グロース―アメリカのサスティナブルな都市圏政策』(編著、学芸出版社、2003年)、『成長主義を超えて―大都市はいま』(編著、日本経済評論社、2005年)、『まちづくりの百科事典』(編著、丸善、2008年)ほか。

松本 昭(まつもと あきら)

7章、8章2~4節

1954年生まれ。(株)市民未来まちづくりテラス 代表取締役。
東京大学大学院工学研究科都市工学専攻修士課程修了。首都大学東京・東洋大学非常勤講師、逗子市まちづくり審議会会長、横浜市都市計画審議会委員、浦安市都市政策専門委員、(社)日本建築学会協議調整型ルール委員会委員等を歴任。技術士(都市及び地方計画)、一級建築士、マンション管理士、再開発プランナー、建築基準適合判定資格者、宅地建物取引主任者。
主な著書に『地方分権時代のまちづくり条例』(共著、学芸出版社、1999年)、『まちづくり条例の設計思想』(単著、第一法規、2005年)、『自治体都市計画の最前線』(共著、学芸出版社、2007年)など。

杉崎和久(すぎさき かずひさ)

8章6節

1973年東京都生まれ。まちづくりコーディネーター。東京理科大学、駒沢女子大学等非常勤講師。
東京理科大学理工学部修士課程修了、東京大学工学系研究科博士課程(都市工学)単位取得退学。(財)練馬区都市整備公社練馬まちづくりセンター専門研究員を経る。埼玉県所沢市、神奈川県大和市、京都府宇治市等登録街づくり専門家。
主な著書に『市民参加と合意形成』(共著、学芸出版社、2005年)、『新しい自治のしくみづくり』(共著、ぎょうせい、2006年)、『まちづくり百科事典』(共著、丸善、2008年)、『市民主体の都市計画』(共著、学芸出版社、2009年)など。

執筆協力

野島史暁(のじま ふみあき)

8章5節

1985年東京都生まれ。経営コンサルティング会社勤務。
2008年東京大学文学部行動文化学科卒業、2010年東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻修士課程修了。

書籍概要

成長時代の都市計画はまちづくりの阻害要因にすらなっている。逆都市化、超高齢社会、低炭素、地方分権、都市間の連携と競争……突きつけられた課題にいかに応えるか!? 歴史をふりかえり、今すでに始まっている変化、工夫を捉えなおし、市民・民間主導のまちづくりを自治体が支える都市計画のあり方を構想する待望の一冊。

読んでみて

 「東大まちづくり大学院シリーズ」と聞いて、うわ、難しそう…と思ったそこのアナタ。ちょっと待ってください!確かに内容は専門的ですが、これがね、今の日本に住む私たち全員にとって、避けては通れない、むしろ「知っておくべき」現実を突きつけてくる本なんですよ。

なぜ今、「人口減少時代の都市計画」なのか?

皆さん、実感ありますよね?

  • 近所のシャッター通りが増えた…
  • 利用者が減って、バス路線が廃止になった…
  • 空き家が目につくようになった…
  • 小学校が統廃合された…

これ、全部「人口減少」という巨大な波が、私たちの「まち」に引き起こしている変化なんです。

これまでの都市計画は、良くも悪くも「人口が増えること」「経済が成長すること」を前提に進められてきました。インフラを整備し、新しい住宅地を作り、道路を広げ…まさに「拡大」の思想です。

でも、現実はどうでしょう?日本の人口は減り続けています。この現実に、従来の「拡大」前提の都市計画は、もはや通用しません。いや、むしろ、今のやり方のままでは、私たちのまちが「縮小」という名の「衰退」を早めてしまう危険性すらあるんです。

この本が扱うのは、まさにこのパラダイムシフト。人口が減る時代に、どうやって「まち」を維持し、再生し、そして未来につないでいくのか?その究極の問いに対する、最前線の知見が詰め込まれています。

深堀り!この本から見えてくるヤバい現実と新たな視点

この本、ただ単に「空き家が増えて大変だね」で終わる話じゃありません。東大のトップ研究者たちが、長年の研究と実務経験に基づいて、超具体的に、そして学際的な視点から「人口減少時代のまちづくり」の課題と可能性を分析しています。

いくつかのポイントを深堀りしてみましょう。

  1. 「縮小」を前提としたゾーニングと土地利用: これまでは「どこにでも建てていいよ」的な側面もあった日本の土地利用。でも、人が減ると、全てのエリアで今まで通りのサービス(水道、道路修繕、ゴミ収集など)を提供するのは非効率かつ財政的に不可能になります。 本書では、都市を機能に応じてギュッとコンパクトに集約するエリア(「集約エリア」とか「居住誘導区域」みたいな言葉が出てきます)と、そうではないエリアで、思い切った土地利用のルール変更が必要になることが示唆されています。つまり、「住む場所」「建物を建てる場所」を意図的に誘導・制限する必要が出てくるという、これまでの常識を覆す話も…!これは、個人の土地所有権やライフスタイルにも関わる、非常にデリケートかつ重要な問題提起です。
  2. インフラと公共サービスの「最適化」という名の再編: 人が減れば、使う人も減る。でも、インフラ(道路、橋、上下水道)は老朽化していく。これを全部維持・更新するのは不可能。 この本では、どのインフラを維持し、どれを廃止・再編するのか?学校、病院、公共交通はどう維持するのか?といった、**「縮小社会における公共サービスの最適化」**という、痛みを伴う可能性のある議論が避けられずに語られています。下手したら、住む場所によっては「水道が来なくなる」「バスがなくなる」なんて事態も想定しておかなければならない…?リアルすぎてもう…。
  3. 空き家問題のその先へ: 空き家、もはや社会問題ですよね。でも、この本は単なる空き家対策に留まりません。なぜ空き家が増えるのか、そしてその空き家がまちの景観や防災、治安にどう影響するのかを構造的に分析。さらに、空き家を単なる「負の遺産」とせず、リノベーションや新しい用途で活用したり、あるいは戦略的に「負動産」として処理(!)したりするといった、踏み込んだ議論もされています。もはや「なんとか活用しよう」という牧歌的な話だけでは済まないステージに来ていることを教えてくれます。
  4. 住民参加と合意形成の重要性: これらの厳しい選択や変化を乗り越えるには、行政だけで決めるのではなく、住民の理解と合意形成が不可欠です。コミュニティの力をどう引き出すか、新しいまちづくりの担い手をどう育てるか、といった、「人」を中心にしたまちづくりのソフト面にも光を当てています。テクノロジーも重要ですが、結局はそこで暮らす人々の営みがまちを作る。その当たり前だけど難しい部分にどう向き合うか。

読んで、絶望するのではなく、「考える」スタートラインに立つ

正直、この本を読んでいると、「うわー、日本の未来って結構ヘビーだな…」と、ちょっと絶望的な気持ちになる瞬間もあります。でも、そこで思考停止しないのが大事。

この本が素晴らしいのは、単に問題を並べるだけでなく、それに対してどういう考え方で、どういう選択肢がありうるのか?という**「思考のフレームワーク」**を与えてくれる点です。

これは、東大の最先端の研究者たちが、長年培ってきた知見と分析力があってこそ。机上の空論ではなく、多くの調査や実例を踏まえているからこそ、説得力がハンパないんです。

都市計画の専門家だけでなく、

  • 自分の住むまちの未来が気になる人
  • 実家が空き家になるかもしれない…と悩んでいる人
  • 自治体職員や議員さん
  • 不動産業界や建設業界にいる人
  • 地域おこしに関わっている人

などなど、「人口減少」と「まち」というテーマに関心がある全ての人に、ぜひ手に取ってほしい一冊です。

決して読みやすい小説ではないですが、これからの日本を考える上で、これほど示唆に富む本もそうそうありません。ページをめくるたびに、「ああ、この問題はこういう構造だったのか」「うちのまちのこれも、この話に繋がるのか」と、点と点が繋がる感覚があるはずです。

まとめ:この本を読んで、自分のまちの未来を考えよう

『人口減少時代の都市計画』は、快適で便利な「まち」が、実は多くの人や経済活動、そして「拡大」という前提の上に成り立っていたことを痛感させられる本です。そして、その前提が崩れた今、私たちがどう立ち向かうべきか、その厳しくも希望を見出すための道筋を示してくれます。

未来は、誰かが与えてくれるものではなく、私たち自身が考え、行動することで創っていくものです。

ぜひ、この本を手に取って、あなたの、そして日本の「まち」の未来について、一緒に考えてみませんか?読後には、きっと景色が違って見えるはずです。



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