【読書】社会学の理想2 都市・情報・グローバル経済【慶應通信】

慶應義塾大学通信

皆様、お疲れ様です!読書は進んでいますでしょうか?今回は慶應大学の都市社会学の学習の為に「社会学の理想2 都市・情報・グローバル経済」を読みました。科目履修のテスト代替でのレポート作成の為に読みました。

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著者概要

マニュエル・カステル・オリバン(スペイン語: Manuel Castells Oliván: スペイン語: [kasˈtels], カタルーニャ語: [kəsˈteʎs]、1942年2月9日 – )は、スペイン・アルバセテ県エリン(英語版)出身の社会学者。専門は情報社会学・都市社会学。カリフォルニア大学バークレー校名誉教授。2020年からスペイン政府の第2次サンチェス内閣で大学大臣を務めている。スペイン語の発音はマヌエル・カステルス、カタルーニャ語の発音はマヌエル・カステイス。
Wikipediaより引用

経歴
アルバセテ県に生まれてラ・マンチャ地方で幼少期を過ごしたが、家族でカタルーニャ地方のバルセロナに転居して法学と経済学を学んだ。とても保守的な家庭で育ったが、青年期にはフランコ体制下のスペインにおいて反フランコ運動に傾倒した。その政治活動性ゆえに国外への脱出を余儀なくされたが、20歳の時にフランスのパリ大学で社会学の学位を取得し、1967年にはパリ大学で社会学の博士号も取得した。1967年にはパリ第10大学で講師となったが、1968年には学生の抗議によって失職した。1970年から1979年にはパリの社会科学高等研究院で教員を務めた。1979年にはアメリカ合衆国に渡り、カリフォルニア大学バークレー校で社会学と都市計画の教授に就任した。2001年にはスペインのカタルーニャ・オベルタ大学(通信制大学)の研究教授に就任した。カリフォルニア大学バークレー校では24年間教鞭をとり、2003年にはバークレー校の名誉教授に就任した。2003年には南カリフォルニア大学アネンバーグ・コミュニケーション・ジャーナリズム学部の教授に就任した。2008年には欧州イノベーション工科大学院(英語版)の理事に就任した。ケンブリッジ大学セント・ジョンズ・カレッジの研究員でもある。2020年にはスペイン政府の第2次サンチェス内閣で大学大臣に就任した。
Wikipediaより引用

評価
2000年から2014年の期間中、社会科学分野においてカステルの論文被引用回数(社会科学引用指数)は世界第5位であった。2012年には「ネットワーク社会における都市経済と世界経済の政治力学の知識を形成した」と評価されてホルベア賞を受賞した。2013年に社会学分野でバルザン賞を受賞した。
Wikipediaより引用

研究・思想
1970~80年代前半にかけて、マルクス主義的な都市社会学理論を展開し、世界的な新都市社会学のムーブメントを生み出す。物的支持、集合的消費、都市社会運動などがこの時期のキー概念であった。 その後はマルクス主義的な資本主義批判から軸足を移し、経済リストラクチャリングにおいて新たなテクノロジーの果たす役割を討究するようになる。1989年には、『情報都市』のなかで「フローの空間」概念を提示し、グローバルな情報文化を構成する物質的要素と非物質的要素の分析軸を与え、地理学等関連分野にも大きな影響を及ぼした。 1990年代には、以上の二つの研究関心を接合し、『情報時代』(The Information Age)三部作に結実させている。たとえば、このなかでカステルは、「フローの空間」の編成に着目することで、かつての「都市計画」対「都市社会運動」という二分法に収まりきらない社会空間的営為の変化の動向をつかもうとしている。また、2000年以降は同様の文脈で、ネットワーク社会論を展開している。
Wikipediaより引用

書籍概要

本書は、世界各地の都市、地域が、経済のグローバリゼーションと社会のインフォーマリゼーションによって、どのように変容したかについてとり扱っている。
20世紀末世界不況の裡に生じた、産業的発展様式から情報的発展様式への「発展様式」の転換を基調テーゼとして、現代社会の諸問題に関わる問題を描き出そうとする試み。
Amazonより引用しています。

読んでみて

 カステルさんが展開している理論は古くなくて、むしろ新しい感じがします。例えば、フローの空間の部分などはまさに現在におけるメタバースのようなもので勉強になります。ただ、概念的な部分も含めて、言葉や文言が少々難解かもしれません。単純に科目履修試験の代替レポートで短い期間で対応するためだと理解する時間が乏しいかもです。正直、私もジックリと読み込めたわけではないですね・・。とはいえ、都市社会学の理解にはかなり重要な書籍であることには変わりないです。


本書の核心!3つのテーマを「社会学的に」深掘りする快感

本書を読むことで得られる最も大きな学びは、まさにこの3つのテーマを「社会学的に」理解できるようになることです。それぞれのテーマについて、本書がどのような視点を与えてくれるのかを深掘りしましょう。

テーマ1:都市 – 「モノ」の集積から「関係性」の場へ

都市社会学は古くからある分野ですが、本書は現代の都市が抱える問題を捉え直します。単に人口が多い場所、建物が多い場所としてではなく、様々な背景を持つ人々が集まり、相互作用し、複雑な社会関係が日々生み出されている「関係性の場」 として都市を捉えます。

  • 都市の魅力と影: なぜ人々は都市に惹きつけられるのか?そこに生まれる匿名性や自由とは?一方で、都市が抱える格差、分断、疎外といった問題はどのように発生し、人々に影響を与えるのか?
  • 空間と社会: 都市の物理的な空間(街並み、建築物、公共空間)が、人々の行動や社会関係をどのように規定するのか。空間の社会学といった視点からの分析。
  • グローバル化の中の都市: 世界中の人、モノ、情報、資本が集まる「グローバル都市」の役割とは?グローバル経済の中で、都市の機能や構造はどう変化しているのか?

本書を読むと、普段何気なく歩いている街の景色が、社会学的な視点を通して全く違って見えてきます。「この道の造りは、人々の交流を促すのか、それとも分断するのか?」「あの建物の配置は、どのような権力関係を示唆しているのか?」…都市が持つ意味や構造を読み解く視点が養われるのです。

テーマ2:情報 – 洪水が生み出す新しい社会構造

現代は「情報化社会」、あるいは「情報過多社会」と呼ばれますが、本書はこれを社会学的なレンズで捉えます。情報が単なる「データ」ではなく、人々の行動を規定し、社会構造を変化させ、新たな権力関係を生み出す力 を持つものとして分析します。

  • メディアとコミュニケーション: テレビ、新聞といった旧来のメディアから、インターネット、SNSといった新しいメディアが、人々のコミュニケーションや世論形成をどう変えたか。情報伝達のスピードと質、信頼性の問題。
  • ネットワーク社会: インターネットによって物理的な距離を超えて人々が繋がる「ネットワーク社会」の特性とは?そこで生まれる新しいコミュニティや、一方で生じる分断(デジタルデバイドなど)。
  • 監視と管理: ビッグデータやテクノロジーによる情報収集が、私たちのプライバシーや自由をどう脅かすのか。監視社会化の進展とその社会への影響。
  • 「真実」の相対化: フェイクニュースやポスト真実といった現象が、情報の信頼性や、人々が何を信じるかにどう影響を与えるのか。

本書を読むと、私たちが日々浴びている情報が、いかに意図を持って生成・操作され、私たちの認識や行動に影響を与えているのかが見えてきます。SNSでの「繋がり」が持つ意味、そして情報が社会の格差や分断をどう再生産するのかといった、現代の情報社会の光と影を理解する助けとなります。

テーマ3:グローバル経済 – 地球規模で繋がる社会の深層

グローバル経済は、私たちの生活に最も直接的な影響を与えているテーマの一つですが、本書はこれを経済学とは異なる、社会学的な視点から捉えます。経済活動が、人々の移動、文化の交流、そして社会構造や格差を地球規模でどう作り変えているのか に焦点を当てます。

  • グローバル化と格差: 国境を越える資本や労働力の移動が、世界各地でどのような格差を生み出したり、変化させたりしているのか。先進国と途上国の関係性、国内での地域間格差。
  • 人の移動と多文化社会: グローバル経済は人の移動を加速させます。移民、難民、労働者…様々な背景を持つ人々が国境を越えることで、受け入れ側の社会にどのような変化(多文化化、摩擦)が生じるのか。
  • 消費文化のグローバル化: 世界中で画一化されていく消費スタイルや文化が、地域固有の文化やアイデンティティにどう影響を与えるのか。
  • 金融化とリスク: 実体経済から離れて肥大化する金融市場が、世界経済や個人の生活に不安定性やリスクをどうもたらすのか。リーマンショックのような金融危機は、単なる経済現象ではなく、社会全体にどのような影響を与えたのか。

本書を読むと、遠い国で起きたニュースが、決して他人事ではなく、私たちの生活と密接に繋がっていることが肌感覚として理解できます。あなたが着ている服がどこで作られたのか、普段使っているスマートフォンの部品がどこから来ているのか…グローバル経済という巨大なシステムの中に、私たち一人一人が組み込まれている現実を認識できます。

3つのテーマの「繋がり」を読み解く、社会学の面白さ

本書が特に素晴らしいのは、この「都市」「情報」「グローバル経済」の3つのテーマを、それぞれ独立したものとして論じるだけでなく、それらがどのように相互に絡み合い、現代社会という複雑なシステムを構築しているのか を明らかにしている点です。

例えば…

  • グローバル経済を動かす金融・情報の中枢は、世界の主要な都市に集中しています。これらの都市は、単なる地理的な場所ではなく、グローバルな情報ネットワークの結節点となり、世界中の資本、技術、人材を引き寄せています。
  • 新しい情報技術(インターネット、SNS)は、モノ、サービス、資本、そして人々の移動を加速させ、グローバル経済の構造を大きく変えました。同時に、これらの技術は都市での生活や働き方にも変革をもたらしています。
  • グローバル経済によって人の移動が増えることで、都市は多様な文化や情報が交差する場となります。しかし、それが新たな社会的な緊張や分断を生むこともあり、情報がそのプロセスにどのように関わるのか(偏見の拡散、共感の形成)も重要なテーマです。

このように、3つのテーマは切り離すことができません。社会学は、この複雑な「繋がり」を解き明かし、現代社会が抱える課題の本質に迫ろうとします。この繋がりが見えてくる瞬間の、脳の霧が晴れるような感覚、これこそが社会学を学ぶ醍醐味だと、本書は教えてくれます。

この本を読んで、私はこう感じた!あなたの「常識」が揺さぶられる

この「社会学の理想2」を読んで、私は非常に多くの刺激を受けました。

まず、普段当たり前だと思っている都市生活、情報収集、そして経済ニュースといったものが、全く違う角度から光を当てられることで、その背後にある構造や問題が見えてくる面白さ。これは、社会を見る「解像度」がグッと上がったような感覚です。

特に、情報があふれる現代において、「なぜ人々は特定の情報だけを信じるのか?」「なぜネット上のコミュニティは時に排他的になるのか?」といった疑問に対し、社会学的な分析を通じて原理が見えてきた時には、まさに「脳汁が出た!」と思うほどの快感がありました。

また、グローバル経済が単に「お金儲け」の話ではなく、世界中の人々の生活、文化、そして社会構造そのものをダイナミックに変動させている力であるという認識も深まりました。遠い国の出来事が自分とどう繋がっているのかを理解することで、世界の見方が変わります。

少し学術的な記述もありますが、日本の研究者が日本の事例も踏まえながら書いているため、非常に分かりやすく、また現実味を持って読むことができます。複雑な内容も、丁寧な筆致で解説されているので、社会学を専門としない人でも、知的好奇心があれば十分読み進められるはずです。

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