ハーバード震撼!中国との「資産」が「負債」に変わった日 – 米政権の鉄槌と学問の自由の岐路

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名門ハーバード大学と中国の長年にわたる関係が、今、激震に見舞われています。かつて「資産」とされたその繋がりは、トランプ政権からの厳しい非難を受け、一転して「負債」の烙印を押されかねない事態へと発展しました。米政権が「反ユダヤ主義を助長し中国共産党と協力している」として、同大の外国人留学生受け入れ資格取り消しという衝撃的な措置を発表。これには、2024年入学者の約5分の1を占める中国人学生も含まれるというのです。大学側の提訴により連邦地裁が一時差し止め命令を出したものの、問題の根深さは依然として横たわっています。

この記事では、ロイター通信の報道を基に、ハーバード大学と中国を巡る複雑な問題の核心に迫ります。なぜこのような事態に至ったのか、背景にある懸念とは何か、そしてこの問題が私たちの社会や学問のあり方に何を問いかけているのかを深掘りしていきましょう。

長年の「蜜月」から疑惑の対象へ:ハーバードと中国の深き絆

ハーバード大学と中国の結びつきは、決して浅いものではありませんでした。数十年にわたり、研究提携、中国に特化した学術センターの設置、そして中国人学生の受け入れを通じて、強固な関係を築いてきました。これらの繋がりは、ハーバードにとって以下のような「資産」をもたらしたとされています。

  • 巨額の寄付金: 経済成長著しい中国の企業や個人からの寄付は、大学の財政を潤しました。
  • 国際政治への影響力: 中国とのパイプは、国際的な学術ネットワークや外交チャネルにおいて、ハーバードの存在感を高めました。
  • 世界的な威信: グローバルな学術機関としての評価を確固たるものにする上で、中国との連携は重要な要素でした。

しかし、この「蜜月」の裏で、その関係の不透明さが徐々に懸念材料として浮上します。特に、中国政府の影響力がハーバード大学の運営や学問の自由に及んでいるのではないか、という疑惑の目が向けられるようになったのです。

渦巻く疑惑:中国による影響力工作と米国の安全保障

「ハーバード大はあまりにも長い間、中国共産党に利用されてきた」。ホワイトハウス当局者のこの言葉は、米政権が抱く強い危機感を象徴しています。共和党議員を中心に指摘されてきたのは、以下のような懸念です。

  • 米国の先端技術への不正アクセス: 中国がハーバード大学の研究網を利用し、米国の重要な技術情報を狙っているのではないか。
  • 米国の安全保障法の回避: 学術交流を隠れ蓑に、米国の安全保障を脅かす活動が行われているのではないか。
  • 米国における中国批判の封じ込め: ハーバード大学内で、中国政府に批判的な言論が抑圧されているのではないか。
  • キャンパス内での嫌がらせ行為の黙認: 中国共産党の指示による、学生や研究者への嫌がらせ行為を大学側が見過ごしているのではないか。

これらの疑惑は、単なる憶測にとどまらない具体的な事例によって、その深刻さを増していきます。

焦点となる事例:新疆、寄付、そして元教授の罪

ハーバード大学と中国の関係を巡る疑惑を裏付けるかのような事例が、次々と明るみに出ています。

  • 新疆生産建設兵団(XPCC)への研修提供: ハーバード大学は2020年以降、中国共産党傘下で、新疆ウイグル自治区におけるウイグル人やその他イスラム系少数民族への人権侵害に関与したとして米国から制裁を受けているXPCCの当局者に対し、公衆衛生関連の研修を提供していました。国土安全保障省によると、この関係は2024年まで継続していたとされています。
  • 不透明な巨額寄付の実態: 2014年、ハーバード大学の公衆衛生大学院に3億5000万ドルという巨額の寄付を仲介したとされるロニー・チャン氏。彼は、米国の法律で「外国の組織」と指定され、ロビー活動の開示義務がある中米交流財団のメンバーでした。この寄付により、大学院にはチャン氏の父の名前が冠されています。
  • チャールズ・リーバー元教授の有罪判決: ハーバード大学化学科の元主任教授であったチャールズ・リーバー氏は、中国政府の「千人計画」への参加や、連邦政府からの研究資金援助に関する虚偽申告で2021年に有罪判決を受けました。これは、トランプ政権下で始まった「中国イニシアチブ(中国によるスパイ活動や知的財産窃盗の摘発を目的とした捜査)」の一環でした。
  • 学内での活動監視と圧力: 中国政府と繋がりのあるとされる学生団体による、中国に批判的な活動家への圧力も報告されています。昨年4月には、ハーバード大学の学生活動家が謝峰駐米中国大使の演説を妨害した際、中国からの交換留学生によって物理的に排除されるという事件も起きました。

これらの事例は、ハーバード大学が中国の影響力工作に対し、どこまで自律性を保てているのかという根本的な問いを投げかけています。

米政権の鉄槌:留学生受け入れ資格取り消しの衝撃

こうした背景のもと、トランプ政権はついに強硬措置に踏み切りました。ハーバード大学が「反ユダヤ主義を助長し、中国共産党と協力している」と断じ、外国人留学生の受け入れ資格を取り消すと発表したのです。これは、同大の国際的な学術活動の根幹を揺るがすものであり、特に中国人学生が全体の約5分の1を占める現状を考えれば、その影響は計り知れません。

大学側は直ちに提訴し、連邦地裁は政権の命令を一時的に差し止める判断を下しましたが、これはあくまで法廷闘争の始まりに過ぎないでしょう。政権の強硬な姿勢は、学問の自由と国家安全保障の狭間で揺れる大学の苦悩を浮き彫りにしています。

専門家たちの警鐘:「逆効果」か、それとも必要な措置か

この問題に対し、専門家からは様々な意見が寄せられています。中国からの元留学生で人権研究者のヤチュー・ワン氏は、トランプ政権の動きを「完全に逆効果だ」と批判します。中国政府による越境弾圧や諜報活動への懸念は正当としつつも、「その対応として、中国人学生だけでなくその他の外国人留学生まで禁止するのは到底理解できない」と語り、無実の学生まで巻き込むことへの問題を指摘しています。

確かに、国際的な頭脳循環や学術交流は、イノベーションや相互理解を促進する上で不可欠です。しかし、その裏で国家的な戦略や影響力工作が進行しているのであれば、大学側も無警戒ではいられません。どこに線を引くべきか、非常に難しい判断が迫られています。

今後の展望:対岸の火事ではない、日本への示唆

ハーバード大学で起きていることは、単に一つの大学の問題に留まりません。これは、激化する米中対立が学術・教育分野にまで深く及んでいることの証左であり、世界の大学や研究機関にとっても重要な示唆を含んでいます。

特に、日本もまた、外国からの研究資金の受け入れや共同研究、留学生の受け入れを積極的に行っています。以下の点について、改めて検討する必要があるのではないでしょうか。

  • 研究資金の透明性の確保: どこから、どのような意図で資金が提供されているのかを明確にする。
  • 影響力工作への警戒: 学内での不当な圧力や情報収集活動に対する意識を高める。
  • 学問の自由と安全保障のバランス: オープンな研究環境を守りつつ、機微な技術や情報が不当に流出することを防ぐ体制づくり。
  • 留学生・研究者の保護: 出身国政府からの不当な圧力から、留学生や研究者を守る仕組み。

まとめ:問われる大学の自律性と国家の安全保障という大命題

ハーバード大学と中国を巡る一連の騒動は、グローバル化が進む現代において、大学がいかにしてその自律性と学問の自由を維持しつつ、国家間の複雑な政治力学や安全保障上の懸念に対応していくかという、極めて困難な課題を突きつけています。

透明性の高い運営、強固な倫理観、そして何よりも真理を探究する学問の府としての使命を再確認することが、今こそ求められています。この問題の行方を注視するとともに、私たち自身の社会における大学のあり方についても、深く考えるべき時なのかもしれません。

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