皆様、お疲れ様です。お元気でしょうか?今回は多頭飼育崩壊のニュースから色々と考えてみたいと思います。

(リンク先ニュースより文章・画像を引用・転載しております)
猫53匹、市営住宅に放置 修繕・消毒費は1千万円か
神戸市東灘区の市営住宅で、賃貸契約に反して猫を飼い、強制退去処分となった40代女性の部屋に猫53匹が放置されていたことが30日、同市への取材でわかった。
女性は猫の世話をすることができなくなり、別の場所で生活していた。ふん尿などで汚れた部屋の修繕や消毒には約1000万円かかるといい、市は女性への費用請求を検討している。
室内には、去勢されていない53匹の猫と数匹の死骸があり、ふん尿で畳が腐り、床に穴が開くなど荒れ果てていた。
(リンク先ニュースより文章・画像を引用・転載しております)
劣悪な環境で飼育されていた結果、強制退去となり、猫たちが保護されるという痛ましい事案ですね。一匹、二匹と増えていった猫が、適切な管理がされないまま数十匹にも膨れ上がり、飼い主自身も、そして猫たちも、極限状態に追い込まれてしまう。これは「多頭飼育崩壊」と呼ばれる問題であり、神戸の事例は、その悲惨な現実を改めて私たちに突きつけるものとなりました。
なぜこのような事態が起こってしまうのか? そして、この悲劇から、私たち人間は一体何を学び、今後どのように行動していくべきなのでしょうか?
1.神戸市営住宅で起きたこと ~「多頭飼育崩壊」という現実の一断面
報道によれば、神戸市営住宅の一室に、高齢の住人の方が飼育していたとみられる猫、実に53匹が取り残されていました。室内は清掃が行き届かず、不衛生な状態であり、猫たちの健康状態も懸念される状況だったとのことです。近隣からの苦情などもあり、最終的に市による強制執行という形で、猫たちが保護されるに至りました。
このようなニュースを聞くと、まず「なぜこんなことに…」「飼い主は何をしていたんだ」といった思いが浮かぶかもしれません。しかし、多頭飼育崩壊は、単に「無責任な飼い主」という一言では片付けられない、非常に複雑で根深い問題を抱えている場合がほとんどです。
この神戸の事例からも、多頭飼育崩壊によく見られるいくつかの側面が見て取れます。
- 数のコントロール不能: 避妊・去勢手術が行われないまま、猫が加速度的に繁殖し、あっという間に飼育できる許容量を超えてしまう。
- 劣悪な飼育環境: 頭数が増えすぎ、飼育するためのスペース、餌、トイレの管理などが追いつかなくなり、衛生状態が極度に悪化する。
- 飼い主の孤立: 問題を誰にも相談できず、一人で抱え込み、状況がさらに悪化していく。近隣からの苦情はあっても、飼い主本人と適切に繋がれない。
- 動物たちの健康状態の悪化: 栄養不足、病気、怪我などが蔓延し、適切なケアを受けられない。
- 周囲への影響: 悪臭や鳴き声、衛生問題などにより、近隣住民の生活環境を著しく損なう。
- 行政の介入の難しさ: 個人の住居内の問題であること、飼い主の同意が必要な場合があること、猫の保護やその後の受け入れ先確保の困難さなどから、問題の早期発見・早期解決が難しい。
これらの要素が連鎖し、最終的に、飼い主にとっても、猫たちにとっても、そして地域社会にとっても、最悪の事態に至ってしまうのです。
2.「多頭飼育崩壊」はなぜ起こるのか? その複雑な背景
多頭飼育崩壊は、猫が増えすぎたという「結果」だけに目を向けがちですが、その背景には、様々な要因が絡み合っています。そして、それはしばしば、動物の問題であると同時に、人間の問題でもあります。
- 人間の側に存在する問題:
- 社会的な孤立・孤独: 高齢者や一人暮らしの方が、猫を唯一の心の支えとし、その数が増えていくことで、さらに社会との繋がりを失い、孤立が深まる。誰にも相談できず、支援を求められない状況。
- 心の病や精神的な不調: うつ病、引きこもり、認知症、あるいは「アニマルホーダー」と呼ばれる、動物を集めることへの強い衝動を抑えられない精神疾患などが背景にあるケースも少なくありません。セルフネグレクト(自己放任)と同時に起こることも多いです。
- 無知・認識の甘さ: 猫の驚異的な繁殖力や、多数の猫を適切に飼育するために必要な費用(食費、医療費、トイレ砂など)、時間、労力、そして周辺環境への配慮といった「飼い主の責任の重さ」を理解していない。
- 経済的な困窮: 収入が少なく、猫が増えても避妊・去勢手術を受けさせたり、適切な量の餌やトイレ用品を用意したりする経済的な余裕がない。
- 猫側の問題と繁殖の連鎖:
- 不妊・去勢手術が行われていない: これが数の増加の最大の、そして直接的な原因です。屋内で飼っていても、一匹でも手術をしていない猫がいれば、あっという間に数が増えます。
- 外との出入りがある: 室内だけで飼育していても、不注意で外に出てしまい、野良猫との間で繁殖してしまうこともあります。あるいは、不妊・去勢していない飼い猫が、外の野良猫を呼び寄せてしまうことも。
多頭飼育崩壊は、これらの人間の弱さや無知、そして猫の生態が、社会的な孤立といった環境要因と不幸な形で結びついた結果として起こると言えるでしょう。
3.神戸の事例から、私たち人間が学ぶべき「教訓」(ここが核心です)
神戸の事例から、そして他の多頭飼育崩壊の事例から、私たち人間が学ぶべきことは、多岐にわたります。これは、動物愛護の問題であると同時に、現代社会が抱える人間の孤立や福祉の問題でもあります。
- 多頭飼育崩壊は、「動物の問題」であると同時に「人間の問題」であるという認識を持つこと: 猫たちの劣悪な状況の裏には、しばしば飼い主自身のSOSが隠されています。飼い主を一方的に非難するだけでなく、その背景にある孤独や困窮、病気といった問題に目を向け、飼い主を含めた「救済」の視点を持つことが不可欠です。動物保護と福祉、医療、地域の見守りなどが連携する重要性を示しています。
- 「異変」に気づき、早期に「繋げる」ことの重要性: 多頭飼育崩壊は、多くの場合、初期段階で周囲が異変(悪臭、鳴き声など)に気づいているにも関わらず、適切な機関に繋がらないまま深刻化します。「他人の家庭の問題だから…」とためらわず、行政の動物愛護担当部署、福祉部署、地域の包括支援センター、あるいは民間の動物保護団体などに、「〇〇さんの家で、猫が増えすぎているようで心配だ」「ゴミが溜まっていて、住人も動物も大丈夫か」といった形で、早期に「相談・通報」する勇気を持つことが、悲劇を防ぐための最初の、そして最も重要なステップです。
- 不妊・去勢手術の徹底と、そのための啓発・支援の強化: 多頭飼育崩壊の根本原因である無計画な繁殖を防ぐためには、不妊・去勢手術の重要性をもっと社会全体で啓発し、飼い主が経済的な理由で手術を諦めなくて済むよう、行政や獣医師会、保護団体が連携して費用の一部助成などの支援を強化することが求められます。これは、不幸な命を減らすための最も効果的な手段の一つです。
- 「飼い主責任」の本質を理解し、社会全体で共有すること: 動物を飼うことは、単なる個人の趣味ではなく、その命に対して終生責任を持つという重い行為です。適切な飼育環境の維持、健康管理、繁殖制限はもちろんのこと、飼い主自身が高齢になったり、病気になったりした場合に、誰に、どう相談し、猫の将来をどうするのか、といったことまで含めて、飼い主自身が事前に考え、準備しておくこと(終生飼養の計画)の重要性を、社会全体で共有する必要があります。そして、その計画をサポートするための行政や民間の相談窓口、受け皿となる施設の整備も不可欠です。
- 集合住宅におけるペット飼育ルールと、コミュニティでの協力: 市営住宅のような集合住宅におけるペット飼育のルールを明確にするとともに、違反があった場合の対応、そして何よりも、居住者同士が互いに見守り、孤立を防ぐためのコミュニティの役割も重要です。困っている人がいれば、責めるのではなく、まずは「どうしましたか?」と声をかける。そんな温かい繋がりが、問題を未然に防ぐことに繋がります。
4.私たち一人ひとりにできること
多頭飼育崩壊は、私たち一人ひとりの意識と行動によって、防ぐことができる問題です。
- 責任ある飼い主になること: もしあなたが猫や他の動物を飼っているなら、その命に最後まで責任を持ち、適切な飼育(不妊・去勢手術含む)を徹底すること。これが、まず第一にできることです。
- 「おかしいな」と感じたら、行動を起こす勇気を持つこと: 近隣で、動物が増えすぎているようだ、衛生状態が悪いようだ、飼い主の様子がおかしい…といった異変に気づいたら、「気のせいかな」「関わりたくないな」と思わずに、行政(動物愛護センター、保健所、自治体の福祉担当部署など)や信頼できる動物保護団体に「相談・通報」してください。あなたの連絡が、状況を改善するための第一歩となります。(通報者の情報は守られる仕組みがあるかも確認しましょう)。
- 多頭飼育崩壊や動物虐待に関する知識を広めること: このような問題があることを、友人や家族、SNSなどを通じて多くの人に知ってもらうことも大切です。
- 動物保護活動を支援すること: 多頭飼育崩壊の現場から救助された動物たちの多くは、民間の動物保護団体などが引き受け、治療やケア、新しい家族探しを行っています。これらの団体の活動を、寄付やボランティアといった形で応援することも、悲劇の連鎖を断ち切ることに繋がります。
- 孤立している人に、温かい目を向けること: 多頭飼育崩壊の背景にある人間の孤独や問題を理解し、地域の中で孤立している人がいないか、見守り、声をかけあうこと。これは、動物のためだけでなく、人間社会のためにも必要なことです。
5.まとめ:多頭飼育崩壊を防ぐ鍵は、人間社会の「繋がり」と「気づき」にある
神戸市営住宅で起きた悲劇は、多頭飼育崩壊という問題が、私たちのすぐそばで起こりうる現実であることを改めて突きつけました。そして、それは動物の問題であると同時に、現代社会の抱える人間の孤立、福祉、そして「繋がり」の希薄さという問題を浮き彫りにしました。
多頭飼育崩壊を防ぐためには、猫の不妊・去勢手術の徹底といった直接的な対策はもちろん、異変に気づく「個人の目」、その情報を適切に受け止め、福祉と動物保護の両面から対応できる「行政の連携」、そして何よりも、地域の中で孤立する人々や動物がいないか見守り、困ったときに「助けて」と言えたり、「大丈夫?」と声をかけられたりする「人間同士の温かい繋がり」が必要です。
猫たちが、そして人間が、安全に、尊厳を持って暮らせる社会であるために。私たちは、この悲劇から学び、二度と同じようなことが起こらないよう、一人ひとりが意識を高め、行動していくこと。そして、社会全体で支え合う仕組みを強化していくことが求められています。
この記事が、多頭飼育崩壊という問題への理解を深め、皆さんが未来への行動を起こすきっかけとなれば幸いです。
最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。
最近、猫ちゃんの多頭飼崩壊問題が多発しているような気がします。
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